丸紋徳利

古伊万里「丸紋徳利」

Marumonと初めて出会い、清水の舞台から飛び降りたつもりで買い求めたのが この古伊万里の徳利。
1989年2月、大阪地方裁判所裏の老松町骨董街にある「多田泉石堂」というお店の置き棚にただ一点展示されていたのを発見、その形と地肌に惹かれて店の中へ。店主の素朴な人柄もあり、骨董の四方山話に花が咲き、数日通う内、益々そのMarumonと店主の双方に魅了され購入を決意。
決断した丁度その時、小柄で温厚そうな老人が居合わせ、聞くとその人はお店のお馴染みさんで野村泰三という骨董の世界では名の知られた先生とのこと。  先生の骨董にまつわる話(「猪口」「伊万里のすべて」等を著作し、骨董にのめり込んだ挙句、財産も家族も失い、アパートを転々とするその日暮しの生活を続ける等)をお聴きするうち、店主の計らいもあり先生に箱書きを書いていただけることに。
翌日、職場の終了チャイムが鳴ると同時にお店に駆けつけ、念願のMarumonを 手に入れ、その箱には野村先生による次の箱書きが記してありました。
「この染付けは優品にして希少なり」
野村先生はそれから数年後お亡くなりになったことを後日店主から聞き、また、10数年後、大阪出張で久し振りにその店を訪ねた時には店主も店の名前も変わっており、時の移ろいを実感しました。